とこしなえの国〟エオニースには、王国を支える4つの都市がある。
北の国境防衛都市〝堅牢たる氷壁〟イズヴァーン。
南の海洋貿易都市〝大海の紅真珠〟ローデ=パーレ。
東の学術教養都市〝叡智の聖櫃〟アークルシェン。
西の娯楽文化都市〝煌めきの坩堝〟オーロティカ。
それぞれの後継者である貴公子たちは、かつて国王とともに巡幸に訪れ、滞在中の数日間を 一緒に過ごしたエオニースの姫君、ロシェッタに密かに心を寄せていた。
ある日、各都市へ「王都にて舞踏会が開催される」という報せが入る。
姫君の婚約者候補を選ぶための、王による選考会であることは誰の目にも明白だった。
ライバルが多いだろうことは承知の上。それでも、せめてこの気持ちを伝えたい。
どうか、もう一度、あの笑顔を見せてほしい。
秘めた想いをその胸に、ささやかな贈り物をその手に携え、貴公子たちは王都へ向かう。