ヨーロッパのボードゲームが花開いた黄金時代。
「西洋版すごろく」の豊かな世界をビジュアルにたどる。
本書で紹介するゲームは「西洋版すごろく」とでも言うべきもので、古き良き意匠がほどこされたマスを追って眺めているだけでも、子供のころのわくわくした気持ちがよみがえるだろう。
初期の高価な手彩色のゲームは上流階級向けの娯楽だったが、安価な大量生産が普及し大衆化するとともに、扱うテーマもデザインも多様に変化していった。
ボードゲームの基本となった《がちょうのゲーム》は、サイコロを振ってマスを進み、マスによっては前進後退の仕掛けがほどこされた、おなじみのすごろくだ。
《がちょうのゲーム》は中世に遡る起源をもつ。
この伝統的なコース設計やルールを土台に、観光旅行・レジャー・学習・道徳・広告・プロパガンダ・風刺といったテーマと融合させて、新しいゲームがいくつも生み出された。
新しいゲームに選ばれたテーマとは、すなわち19世紀ヨーロッパの世相を反映する流行や社会問題でもあった。
著者は娯楽としてのゲームの楽しみとともに、どのようにゲームが世界を映し取ったのかも解き明かす。
著者が蒐集した一級のコレクションから89種のゲームを紹介。
現存数の少ない希少なゲームも含まれており、他に類のない資料性も高い一冊。
目次
- はじめに
- Chapter 1 がちょうのゲーム
- Chapter 2 ふくろうのゲームとギャンブルゲーム
- Chapter 3 教育的ゲーム──楽しく学ぶ
- Chapter 4 道徳と宗教──品行方正に!
- Chapter 5 世界を旅する──どこへ行こうか?
- Chapter 6 戦闘・包囲戦・一騎討──想像力の対決
- Chapter 7 スポーツとレジャー──楽しもう!
- Chapter 8 風刺と抗議──ゲームで一刺し
- Chapter 9 広告と宣伝──メッセージを加える
- Chapter 10 米国へ渡ったボードゲーム──「新しさ」の追求
著者プロフィール
エイドリアン・セビル (著/文)
印刷生産されたボードゲームの文化史を専門とする。自身の研究について、ヨーロッパおよび米国で広く講義を行うなど、国際的に活動している。
英国のケンブリッジ大学とエディンバラ大学で学んだのち、ロンドンのシティ大学の職員となり、学術担当事務局長を務めた。
2016年に米国ニューヨーク市の老舗クラブのグロリアークラブでボードゲームの展覧会を開催し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙で「視野が広がる文化イベント」と評された。