異端審問。火刑。聖と俗。殉教と棄教の狭間。人の営為と葛藤をめぐるストーリーテリングゲーム。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。どこまでの表現がOK か事前に卓の合意を取り、ゲーム・セッション中も理由の如何を問わず参加者にとって許容できない表現があった場合、いったんプレイを中止してください。
「そなたは異端の信仰を棄て、慈しみ深い父なる神の許しを受けるか?」
1244年3月、数百人ものカタリ派信者に向けて、この質問が投げかけられた。彼らは9ヶ月以上にわたりモンセギュール城塞を包囲していた軍勢に降伏したのである。200人以上が否と答え、それによって火刑に処されることを選んだ。信仰に殉じて死を選んだカタリ派信者たちとは、いったい何者だったのだろう?
『モンセギュール1244』では、プレイヤーたちは協力して、彼らが何者であったのかという物語を作り上げていく。個々のプレイヤーは、包囲戦における複数のカタリ派信者たちを演じ、棄教か殉教かの選択に直面する。
「カタリ派の出家信者たる完徳者の思想は、私の身体に宿るあらゆる生命肯定の論理と真っ向からぶつかるものでしたが、それでも私は完徳者たるセシルが原理原則を厳格に守り破滅へ向かうさまをロールプレイするのが止められませんでした」
――ウィレム・ラーセン(幼少期のトラウマとその克服を扱うRPG『The Dreaming Crucible』のデザイナー)
「このゲームのまったくもってエモーショナルな内容に、私は強く感銘を受けました。(……)ゲームを終えてから、卓上で起きたことを考えるために、私は長い散歩をせねばならなくなったほどです。それくらい強烈な体験でした」
――クリス・ベネット(森のなかで取り残された孤独の感覚を描写するRPG『Of the Woods』のデザイナー)
「『モンセギュール1244』は、伝統的なゲーム要素をいくつも盛り込みながら、世界史上において注目すべき経験と奥深くも峻厳な選択をシームレスに織り交ぜて提供する。運命に向き合うカタリ派の人々をプレイすることで、叙事詩的で悲劇的なストーリーが前景化し、ゲームのシンプルで革新的なメカニクスがこのテーマをしっかり下支えする。誰かは火刑に処されるのだ。あなたは驚き、そして変わる。これは偉大なゲームだ」
――ジェイソン・モーニングスター(ナラティヴ・スタイルのRPGの代表的作品『フィアスコ』のデザイナー)
「『モンセギュール1244』は、史実を題材に、信仰と忠誠心、親族の絆の考究に焦点化した緊密なゲーム・フレームを採用している。カトリックのアルビジョア十字軍が異端カタリ派に対してなした最後の激烈な包囲戦を背景に、プレイヤーはピレネー山脈にあるモンセギュール城塞に閉じ込められた真なる信仰の担い手の役割を演じる。刻一刻と避けられない終わりが迫るなか、個々のプレイヤーは、自分のキャラクターが信仰を棄てて改宗するのか、信仰に殉じて焼かれるのかを選択せねばならない。この単純明快な選択が、ゲーム全体を駆動させる。
『モンセギュール1244』は、運命を直視したカタリ派信者たちの恐怖と哀感を見事なまでに惹起し、北欧のライブアクション・ロールプレイングと北米のロールプレイング・ゲームの伝統を見事に融合させている。このゲームは、必要な部分は慎重に作り込まれているが、そうではない部分は完全に自由な形でプレイヤーに任されている。エレガントでシンプルなメカニクスが、ときに驚くほどエモーショナルなプレイをもたらす。プレイヤーに提示される選択肢は不条理なものだ。家族の絆、愛情のもつれ、義務と信仰が、最後に下さねばならない決断の困難を、ただ増幅させるのである」
――2010年度のディアナ・ジョーンズ賞(単なる売れ行きではなく、革新性こそを指標とする「ゲームの卓越性」を評価する賞)選評
「『モンセギュール1244』はゲームとしてとても良くできていて、キャラクターを特徴づけてゆく自由さ(ほのぼの)と、アルビジョワ十字軍によって追い込まれてゆく不自由さ(ゾワゾワ)が徐々に入れ替わってゆくことで、プレイヤーに独特の感情を引き起こさせます。歴史をどれだけ知っているかで受け止め方が変わってくるのも面白いところです」
――大貫俊夫(西洋中世史学研究者、『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』訳者)